そう言いながらそばに居た鬼の首に手刀を落として気絶させていく鬼市くん。


「お前ら、鬼市をヤれ!」


吉祥宮司と舞台の上から見ていた鬼三郎さんが、そう叫んだ。まだ生き残っている鬼たちがばっと振り返り鬼市くんを見る。


「マジでいい加減にして」


額に手を付いて息を吐いた鬼市くんは、次々と飛びかかってくる鬼たちを淡々と相手にしながら容赦なく倒していく。

泣き叫んでいた子供たちも私も、その光景を呆然としながら見つめる。


あっという間に最後の一人を倒した鬼市くんは地面の上で伸びてしまった屍を適当にどさどさ纏めると一気に「よっ」と肩に担いだ。

騒がせて悪かったな、といつもの冷静な顔で言うと鳥居に向かって歩き出す。

鬼が居なくなった社頭は困惑で静まり返っていた。

やがて禰宜の「以上を持ちまして追儺式を終了します」という声が響き、子供たちは両親の元へ走って行った。

一件落着って事でいいんだろよね……?


はぁと息を吐いて、鈍く痛む腰をそっと摩った。