やがて社頭の方から、禰宜の「間もなく追儺式です」というアナウンスが聞こえた。
追儺式、疫鬼や疫神を祓う節分祭の儀式だ。
「よっしゃお前ら気合い入れや!」
八瀬童子一族頭領、鬼三郎さんがそう叫べば、円陣を組んだ皆さんが「ウオオッ!」と声を上げる。
なんというか、この光景だけでも子供たちは泣き出しそうな気がする。
そして社頭から報鼓がなって、棍棒────と言っても子供たちの安全のため発泡スチロール素材なのだけれど、棍棒を担いで社頭へ駆け出して行った。
なんでも以前棍棒を使っていた際に「子供に当たったらどうするんですか!」というクレームが来たらしい。
妖でさえコンプライアンスを気にしなければならないなんて、なんだか世知辛い。
やがて社頭から子供たちの悲鳴が響き渡った。
「今年も始まったなぁ。巫寿ちゃんも準備運動しときや。腰やられるで」
子供たちの悲鳴を聞きながらのんびりと屈伸運動を始めた志らくさん。
前々から「腰が死ぬ」と聞いていたけれど、そこまでなんだろうか?
念の為軽く準備運動を始める。
いやぁぁぁ、ぎゃぁぁぁ、と普通に生きていたら聞かないような子供たちの悲鳴が社務所の扉を閉じていても聞こえてくる。
「あの……志らくさん? 外の様子大丈夫なんでしょうか?」
「ん? 大丈夫大丈夫。毎年こんなもんよ」
お母さぁぁぁん、ごめんなさいぃぃぃ、いやぁぁぁ。
社頭のボルテージは開始時より高まっている気がする。
本当に大丈夫なんだよね?