福神の衣装に着替えて社務所に顔を出すと、既に着替え……というか変身を終えて言葉通り「鬼」の姿になった八瀬童子一族の皆さんで溢れかえっていた。

朝、揃って挨拶に来てくれたけれど、優しそうな面持ちでスラリとした体型の人が多かった。

けれど今社務所を埋めつくしているのは、ボディビルダーばりの盛り上がった筋肉に燃えるような赤い肌、頭には太く鋭いツノを生やした正真正銘の鬼だ。

事前に聞いていなかったら多分私も悲鳴を上げていたかもしれない。こりゃ毎年阿鼻叫喚の図になるよね、と苦笑いをうかべる。


すみません、ちょっとすいません、と談笑する皆さんの間をすり抜けて奥を目指す。

途中で誰かの胸筋と誰かの背筋に挟まれて動けなくなっていると、突然腕を引っ張られた。


「何やってんの巫寿ちゃん」


助け出してくれた志らくさんだった。私と同じように福神の衣装に着替えている。


「志らくさん……! 助かりました、ありがとうございます」


志らくさんが呆れた顔で笑った。


「似合うとるわ福神の衣装。もうそろそろ出番やから、打ち合わせ通り頼むわな」

「はい。鬼の皆さんが出て十分後に、私も社頭に出ればいいんですよね」

「そうそう、バッチリみたいやな。巫寿ちゃんが先に出て行って、少しした後にうちも社頭出るからな」


一緒に出て行かないんだ、なんて思いながらも「分かりました」と頷く。