忙しかったのはどうやら前日の準備段階までだったようで、いざ節分祭が始まるとかなり余裕が出来た。
午前中は授与所の留守番を任されているので座って待機していたけれど、参拝客が御守りを求めに来ることも無く、社頭の舞台も正面に見えるので特等席から奉納舞や奉納神楽を眺めることが出来た。
地元の子供たちによる浦安の舞の奉納が始まって、可愛いなぁと頬を緩ませながら眺める。
私もそろそろ鼓舞の明の練習に本腰を入れないとな。
ぼんやりと舞台を見つめながら小さく息を吐く。
神社実習は二月末で終わってしまう。もう一ヶ月を切った。実習が終わってしまえば私たちは神修に戻らないといけないし、志らくさんから直接教えて貰う事は難しくなる。
今のうちに教えて貰えることは全て教わっておかないと。
三月あたまにある昇階位試験には間に合わないかもしれないけれど、教えてもらったことはきっと試験でも生かせるはずだ。
節分祭で昨日と今日はマスター講座が休みだった。明日から再開するし、気合い入れなきゃな。
よし、と自分を鼓舞するように気合いを入れ直したその時。
「何百面相してんの」
そんな声が聞こえてハッと我に返った。
授与所の前に立っていたのは鬼市くんだった。