「────よ、この前ぶり」


いつもより少し早くに社を明けて、朝から次々とやってくる節分祭関係者の対応に当たっていると、開式の1時間前に社務所に顔を出したのは八瀬童子(やせどうじ)一族の鬼の妖、同い年の男の子鬼市(きいち)くんだった。

今日は私たちと同じで白衣に白袴という神職の姿だ。

私たちの姿を見つけると、軽く手を挙げた。一番近くにいた私の元へ歩いてくる。


「鬼市くん、おはよ。今日はよろしくお願いします」

「おはよ。こちらこそ。八瀬童子(やせどうじ)の待機場所、去年と同じ二階の会議室でいいのか」

「うん、大丈夫。他の皆さんも到着してるよね? 着替えて待っててくださいって伝えてもらっていい? すぐに禰宜が最終打ち合わせしに行くから」


了解、とひとつ頷いた鬼市くん。

くるりと背を向けて歩き出すかと思えば、またくるりと半回転してこちらに向き直す。

思わず目を瞬かせた。


「荷物の衣装、多いから運び込むの手伝ってくんない?」


あ、なんだ、そういうことか。

もちろんと頷いてついて行こうとしたその時、突然後ろから二の腕をガシッと掴まれて身体がつんのめる。

振り向くと険しい顔をした恵衣くんが私を冷たい目で見下ろしている。