「慶賀お前、実家の社で節分祭の準備手伝わなかったの?」

「あーやだやだ。これだからお坊ちゃまはよぉ」

「普通初等部上がるまでは、ろくに家の手伝いなんてしないもんなんだよ!」


頬を膨らませて抗議する慶賀くんにくすくす笑う。

嘉正くんは良家の長男でお父さんが宮司、泰紀くんは本人曰く神職が雇えないほど貧乏なお社の長男、二人とも自ずと手伝わなければならない環境だったんだろう。

思い返せば私も実家にいた頃は、ほとんどの家事をお兄ちゃんに任せっきりだった。


言えた立場じゃないのでちょっと肩身が狭い。

黙ってお鍋をかき混ぜた。


「まぁビックリした! あんたらそんなとこ座り込んで何してんの!」


お盆に空いたお皿を乗せた千江さんが入ってきて、床に座り込む皆に驚いたように声を上げた。


「お昼温めなおしてまーす」

「立ってるのがしんどいので座ってまーす」


そう答えた二人に「この子らはホンマに……」と息を吐く。


「やったるから居間で待っとき」

「やりぃ! サンキュー千江さん!」

「アンタは何にもしてないやろ。電子レンジと巫寿ちゃんにお礼いいなさい」

「電子レンジあんがとな! 巫寿も!」


私がついでなんだ、と心の中で少し突っ込む。千江さんに礼を言いながらお玉を渡して場所を代わった。