────ねぇ、志らく。辛い。凄く辛い。あなたに会いたい。お父さんにお母さんに会いたい。この場所は凄く寂しいの。お母さんたちの反対を押し切ってまで選んだ場所なのに情けないね。でも、もう無理なの。帰りたい、うちに。みんなに会いたいよ。審神者は大切なお役目だって分かってる。でもね、審神者って何も出来ないの。ただのお飾りなの。ただの巫女。あなたや泉ちゃんと何も違わない。力はあるはずなのに何にも出来ない。何も出来ない自分が情けない。不安に押しつぶされそう。ここから逃げ出してしまいたい。志らく、助けて。
綺麗に消したつもりだったけれど、筆跡が残ってしまったのだろう。残ったその字はあの達筆からは想像ができないくらい、頼りなくて不安定だった。
寂しいなんて思う暇もなかったんじゃ、なんて考えた自分を恥じた。そんなはずがないのに。
神修を卒業してすぐに審神者になったということは19か20の頃に審神者になったんだろう。私よりも三つか四つ、年上なだけだ。
きっと私が感じたように、いいや私が感じた以上に孤独だったに違いない。
きっと志ようさんが一度は吐露してしまったその気持ちを消していつも通りの元気な姉を演じて見せたのは、きっと志ようさんの優しさであり強がりだったんだろう。
手紙を封筒に戻してダンボール箱の奥底に入れた。
志ようさんもそれを望んでいるような気がした。