ダンボール箱に隙間なく入った手紙の束。
何年も何年も、この姉妹がこの手紙でお互いを気遣いあっていたことが分かる。
あ、ちなみにお姉は昔から話が長いから、私の手紙一通に対して便箋10枚以上でで返事よこしてくるんよ。ここに入ってるの半年分とかしかないから。
志らくさんが内容を見返しながらそう笑い。
ちょっと感傷に浸りそうだった私の気持ちを返して欲しい。
「あの……初めて聞いたんですけど、審神者になった巫女とは連絡取っちゃダメなんですか?」
「あかんあかん。かむくらの社に足踏み入れた時点で、言祝ぎの巫女って凄い特別な存在になるんよ。だから社からでるのも許されへんし、下界との接触は年に一度の上層部が審神者のご機嫌伺いにくる一日しかないねん」
目を見開いた。
「初めて聞きました。学校では習ってないので」
「習わんよ、あそこでは。身内が審神者になった時に知らされるんよ。あ、ちなみに今私が喋ったことの殆どが他人に話すと違反になるんよ。ホンマ頼むで巫寿ちゃん、誰にも言わんといてな」
この数分で軽く数個は違反してませんか、志らくさん。
心の中でそう突っ込む。
そうかでも、審神者になったら外とは連絡をとっちゃ駄目なんだ。
実家の近所に住んでいた同級生のお姉さんが就職で上京して、夏と冬に一度ずつ帰省していたけれど、その友達の家に遊びに行くとおばさんはいつも少し寂しそうな顔をしていた。