くるりと手紙をひっくり返して、送り主を確認する。達筆な字で書かれた「志よう」という名前に目を瞬かせた。

ほかも拾い上げてみる。どれも宛名は「志らく」で送り主は「志よう」だった。


「志ようさんからのお手紙ですか? こんなに沢山……」


同じ家で暮らす姉妹なのに文通なんて珍しい、とそこまで考えてそうじゃないことに気がついた。


「あー……これな。他の人には黙っとってな。審神者になった巫女と連絡取るのは神役諸法度に違反してるから」


一つ一つ優しい手付きで手紙を拾い上げる志らくさんにきゅっと唇を結ぶ。

これは審神者になった後の志ようさんとの手紙なんだ。


「でも、かむくらの社は本庁の上層部しか場所を知らないんじゃ……? それにこの手紙、住所も何も書いてないし……」

「巫寿ちゃん、両親の仕事忘れたん? 泉ちゃんといっくんは歴とした本庁の上層部やで。禄ちゃんは本来立ち入ったあかん立場なんやけど、あの二人に社への入り方を教えてもらったみたい」


そうか、確かに両親は本庁の人間だった。上層部の人間だったのは初耳だけれど、それなら納得だ。

昔の両親はなかなかヤンチャだったと聞いたし、志ようさんも型破りな性格だったらしい。嬉々として禄輪さんにかむくらの社への入り方を教える姿が思い浮かんだ。


「禄ちゃんが月に一、二回私から手紙を預かってお姉に届けてくれたんよ。その時のお姉からの返事がこれなんや」