ひらひらと手を振りながら嘉正くんは台所へ向かった。
シャーペンを筆箱に片付けて深く息を吐いた。
今日はいつもより勉強に身が入らない。他のみんなも同じように今日は何だかやる気が出ないらしい。
ギリギリ起きていた泰紀くんもいつの間にかテーブルに突っ伏して眠っていた。
時短レシピのコーナーが終わってスキャンダル報道が始まる。頬杖をついてぼんやりとそれを眺めた。
「あれ、なんや今日は皆家におったんか」
そんな声とともに居間に顔を出したのは志らくさんだった。抱えていた大きなダンボールを足元にどさどさと置いた。
「志らくさん」
「せっかくの休みなんやし、子供らしく出かけてくりゃええのに」
「あはは……なんかやる気でなくて」
「そんな年寄りみたいな事言うて、覇気ないなぁ」
呆れたように息を吐いた志らくさんに苦笑いを浮かべた。
「それはそうと巫寿ちゃん、お母さんか他の巫女見かけてない?」
「千江さんですか? たしか少し前に買い物に出かけました。巫女のおふたりは吉祥宮司のお使いで1時間くらい前に鬼脈に」
「マジか〜。権宮司は今日遅番やし禰宜は授与所やもんな」
ふむ、と腕を組んだ志らくさん。
「どうかしましたか?」
「いや、このダンボールの中身を片したいんやけど、ちょっとひとりじゃキツくて」
「あ、だったら私手伝います」
そう言って立ち上がれば志らくさんは目を輝かせる。
おおきに巫寿ちゃんほなこれお願いな、と遠慮なく両手に乗せられたダンボール箱はずっしりとしていてたたらを踏んだ。