はぁ、と息を吐いて空を見上げた。分厚い灰色の雲に隠れた満月が鈍い光を放っている。

頬に綿毛のような冷たいものが触れたかと思うと、じゅわりと溶けて雫になった。


「雪が降ってる……」


思わずそう呟くと、先を歩いていた皆が足を止めて顔を上げた。

桜の花びらのような大きな雪片がふわりふわりとまばらに落ちる。

通りで今晩はよく冷えるわけだ。


「早く社務所入ろう。来光はいないけど調査は進めなくちゃいけないし、今日の進捗纏めないと。恵衣も会議室で待ってるし」

「だな」

「さっさと終わらせようぜ」


パタパタと社務所に走っていく皆をぼんやりと見つめる。

振り返った嘉正くんに名前を呼ばれて我に返る。「うん」と答えながら小走りで社務所へ向かった。

社務所へ入る前にもう一度見上げた夜空は、もう月が雲の後ろに隠れて仄暗くどこかもの寂しい気がした。