いつもは来光くんをからかってばかりの二人も今回ばかりは大人しい。
「なぁ……来光何であんな所にいたんだ? やっぱりアイツ、本気で自殺するつもりだったんじゃ」
眉を下げて慶賀くんがそう言えば、馬鹿野郎!と泰紀くんの拳が脳天に落ちた。
「縁起でもない事言うな! あの気の弱い来光がそんな事出来るわけねぇだろ!」
「でもよぉ……あんな事があったら、何もかも嫌になんだろ」
何か思うところがあったらしい、口を閉じた泰紀くんは気まずそうに目を逸らした。
やがて皆は何を言えばいいのか分からなくなったのか口を閉ざした。私も同じだった。
来光くんが感情のままに怒鳴る姿を初めて見た。
慶賀くんたちに迷惑をかけられて怒鳴ったり、恵衣くんと衝突して言い合いになっている所は何度か見かけたけれど、あれほど感情を剥き出しにする姿はこれまで一度も見た事がなかった。
『お前なんか、お前なんかッ────』
泰紀くんが制していなければ、呪の昂ったあの声で何を言うつもりだったんだろうか。間違いなく紡がれていたのは呪いの言葉だっただろう。
そこまで来光くんを追い詰めるほどの過去があったのだと思うと、どうしようもなく胸が痛かった。