「来光……大丈夫かな」
慶賀くんが振り返って電気の消えている来光くんの部屋の窓を見上げた。
きっちりと閉められたカーテン、中の様子は何も見えない。
「禰宜も診てくれたんだし間違いないよ。今はゆっくり休ませてあげよう。身体も、心も」
嘉正くんの言葉にそうだね、と相槌を打つ自分の声もいつもよりも沈んでいた。
数時間前、西院高校の怪異事件について調べるために被害者生徒が入院している病院へ赴いた私たち。
事情聴取を進めているうちに、その被害者生徒が小学生時代に来光くんをいじめていた人物だということが発覚した。
『本気で謝りたいと思うならまずはその相手の名前を思い出したら!? でもさ、ここで会わなかったとしたら君は一生僕に謝罪しようなんて思わなかったよね? つまり自分がした事はその程度だって思ってんだろ!?』
そう怒鳴って病室を飛び出した来光くん。
慌ててその背中を追いかけたけれど、土地になれていない私たちが来光くんを見つけ出せたのはそれから3時間近く経った日が沈む直前だった。
社の近くにある河川敷の高架下でうずくまっていた来光くんに駆け寄った私たち。
嘉正くんがその肩にそっと触れた途端、どさりと地面に倒れ込んだ来光くんを大慌てて社へ運び込んで今に至る。