不安げに見つめていた扉ががちゃりと開いて、救急箱を持って出てきたのは千江さんと禰宜だった。
「千江さん! 禰宜! 来光は!?」
わっと詰め寄った私たちに、二人はやれやれと呆れた顔を浮かべる。
「そないに心配せんでも来光くんはただのインフルエンザです。薬は飲ませたし、目が覚めたら街の医者にも連れていくから問題ありません」
淡々とそう言った禰宜に私達は目を瞬かせた。
「同部屋やった嘉正くんは暫く三人部屋に寄せてもらって。治るまでは全員この部屋立ち入り禁止、荷物持出す時はちゃんとマスクつけてから部屋入ってや」
千江さんにそう言われて、来光くんと同部屋だった嘉正くんは不安げにひとつ頷いた。
慶賀くんが身を乗り出した。
「インフルって、ほんとにインフル!? あんなに苦しそうにしてたんだぜ!? アイツ、自殺しようとしたんじゃ……!」
「なに言うてんのこの子は。そんなうっすい制服で出歩いてたんやろ? そらインフルにもなるわ」
ほら散った散った、と手を振った千江さん。私達はしぶしぶ社務所へ向かって歩き出した。
バタバタと帰ってきた頃には夕日はほとんど沈んでいたので、外はすっかり夜になっていた。参道脇の石灯籠に明かりが灯っている。
夕拝は済んでいるので、社頭には屋台を組み立てる妖たちの姿がちらほら見えた。