ゆるりと顔を上げた来光くん。ぼんやりとした目で蔑むように佳祐くんを見下ろした。
「僕の名前、言える?」
「え……いや、あの」
「言えないよね。ずっと死神って呼んでたんだもんね。覚えてるわけないよね」
ふ、と鼻で笑った来光くんは勢いよくその腕を振り払った。
「本気で謝りたいと思うならまずはその相手の名前を思い出したら!? でもさ、ここで会わなかったとしたら君は一生僕に謝罪しようなんて思わなかったよね? つまり自分がした事はその程度だって思ってんだろ!?」
目を見開いた来光くんがそう叫んだ。その頬を大粒の雫が伝う。
「お前なんか、お前なんかッ────」
「来光ッ!」
続きが言葉になる前に泰紀くんが強く肩を引いて止めた。ハッと我に返った来光くんが数度瞬きをして私達を見回した。
くしゃりと顔を歪めると、勢いよく病室を飛び出した。