その呼び方には聞き覚えがあった。
袋の中を見つめたまま動きを止めた来光くんに、佳祐くんが身を乗り出す。
「お前、そうやんな? 死神やんな!?」
身を乗り出した佳祐くんが来光くんの腕を掴んむ。持っていた袋ががさりと床に落ちた。
怖い顔をした嘉正くんが一歩前に踏み出したその時、
「ごめん!」
突然の謝罪の声が病室に響いた。
来光くんの両腕を掴んだ佳祐くんが縋るようにその体を揺する。
「お前の気持ちなんて考えんと、俺お前にひどいことした……! 同じ立場になってから分かるなんて遅すぎるけど、ずっとお前に謝りたかった」
その言葉を聞いてやっと二人の関係性が見えた。
佳祐くんは小学生の頃の来光くんをいじめていたクラスメイトの一人なんだ。
なんて自分勝手なんだろう、と怒りで手が震えた。同じ立場になってやっと来光くんがどれほど苦しんできたのかが分かったから謝るだなんて、虫が良すぎる。
眉根を寄せて「もう帰ろう」と手を伸ばしかけたその時。
「あのさ」
静かに来光くんが口を開いた。
「僕の名前、覚えてる?」
え? と佳祐くんが目を瞬かせた。