「で? 何が聞きたい訳?」
ベッドの周りにパイプ椅子を並べて座った私達に、彼は面倒くさそうにそう聞いてきた。
嘉正くんが身を乗り出す。
「学校で何があったのか、君自身に何があったのか……知ってることは全部話して欲しい。木田佳祐くん」
名前を呼ばれたことで少し驚いた顔をした佳祐くん。
「サッカー部一年の木田佳祐くんであってるよね? 三ヶ月前に屋上から転落した」
「あれは自分から落ちたんじゃない! 後ろから誰かに押されたんや!」
声を荒らげた佳祐くん。思った通りの反応に皆は神妙な顔になる。
────その生徒がおかしなことを言うんです。"俺は後ろから誰かに押されたんだ"って。誰かに背中を強く押されたんだって。だからその時一緒にいた学生たち一人一人に事情を聞いたら、「あいつは自分から飛び降りたって」。
校長先生から聞いた話の通りだ。
「一通り調べさせてもらったから何があったのかはだいたい分かってるんだけど、佳祐くんの口からその日何があったのか聞かせてもらえる?」
途端にすっと顔を逸らした佳祐くんは口を閉ざした。
「……調べたんやったらそれで十分やろ。大人に話したことが全てや」
「でも佳祐くんは納得してないんだよね?」
佳祐くんは布団を強く握った。