西院高校の学生が入院しているという病室の前に辿り着いた。

嘉正くんが軽く扉をノックするとならから「はーい」と返事が聞こえて、扉を開ける。

ベッドの上に寝転がってゲームをしていた男の子が「なぁ母さんアイス買ってきて」とこちらを見ずにそう言った。


「えっと、俺でよければ買ってこようか?」


嘉正くんが答えれば、彼はぱっと顔を上げて目を瞬かせる。


「え、誰?」

「はじめまして。俺、宜嘉正っていいます」


はぁ、と怪訝な顔で私達を見回す。

そう言えば、西院高校で聞き込みをした時は「シスコンのお兄ちゃん」の設定でなんとか乗り切ったけれど、流石にここまで来てしまったらその設定ではかなり厳しい。

一体なんて言い訳するつもりなんだろう。


「諸事情で西院高校の不可解事件について調べてるんだけど、話聞いていい?」

「は? いや、どういう事情?」

「そこは突っ込まないでもらえると」


嘉正くん、流石にそれは無理があるよ……。

案の定彼は余計に警戒した顔で私達を見る。


「まぁまぁ、そういうもんだと思ってくれよ! な!」

「まぁまぁ、後でアイス買ってきてやるからさ!」


まぁまぁ、まぁまぁと宥めながら壁に立てかけられていたパイプ椅子を引っ張ってきてベッドの隣に広げた慶賀くん達。