病院に着いた私たちはエレベーターに乗り込んだ。
言わずもがな雰囲気は最悪で、恵衣くんはいつもと変わらずだけれど嘉正くんが不機嫌をここまで顕にしているのは初めてだ。
来光くんはずっと俯いたままで、慶賀くんたちはどうしたものかと困ったように眉を下げてみんなの顔色を伺っている。
ぽん、とエレベータが到着した音がして扉が開いた。無言のままぞろぞろと降りて、目の前のナースステーションを横切る。
こんな雰囲気のまま調査を続けられるんだろうか。
小さく息を吐いたその時。
「ちょっと君たち!」
突然背後から呼び止められて振り返った。
薄桃色のスクラブを身につけた若い女性の看護師がナースステーションから身を乗り出して私たちを見ている。
「君たち誰かのご家族? 今感染症が流行してるから身内以外の面会は基本駄目なんよ」
え、と皆が目を丸くした。
そんな、ここまで来たのに面会が出来ないなんて。
「あ、えっとあの俺たち……」
「あ、えっと、えー……」
慶賀くんたちがあわあわと必死に言い訳を探す。
息を吐いた嘉正くんが苦笑いで一歩前に出た。
「親戚です。僕がいとこで、このふたりがはとこ。こっちは甥と姪と叔父」
叔父、と言いながら恵衣くんを指さした。
「叔父? 随分若いな」
「年が離れた兄弟で。ね、恵衣オジサン」
分かりやすく眉を釣り上げた恵衣くんに、泰紀くんがすかさず後ろから羽交い締めにして口を塞いだ。