「もういいから嘉正!」


声を上げたのは来光くんだった。

驚いた嘉正くんは手の力を抜いた。その瞬間恵衣くんは素早く手を振りほどき、険しい顔で制服を整える。


「もういいから」

「でも来光────」

「お願い」



たった四文字のその言葉には、言葉以上の感情が籠っているように感じだ。

もうこれ以上惨めな思いはしたくない、そう言っているように聞こえた。