一番前を歩いていた恵衣くんがいつもの険しい顔で振り返る。
「そろそろ集中してくれないか。学生とはいえまなびの社の神職として引き受けた任務だぞ」
いつも通りの正論だ。
今回ばかりはすべて恵衣くんが正しいので、慶賀くんは唇を尖らせながらも「わーったよ!」と素直に聞き入れる。
「あとお前」
来光くんを睨んだ。
警戒した顔で「何?」と聞き返す。
「お前が過去に酷いイジメにあってようが、俺には関係ない。過去に気を取られて今目の前のことを疎かにされたら迷惑だ」
な、と驚きのあまり声を失ったのは来光くんではなく私だった。
けれど私が何かを言う前に、目の前を人影が横切る。
「おい恵衣いい加減にしろよ」
怒りに震えたその声の主は嘉正くんだった。
震える手で恵衣くんの胸ぐらを掴んだ嘉正くんはこれまでに見たこともないほど怒りを顕にした顔で恵衣くんのからだを激しく揺する。
「言っていい事と悪い事の区別もつかないのか?」
「正論を口にして何が悪い」
「お前のその正論が人を傷つけてるって分かんない?」
一触即発の雰囲気に湧き上がっていたはずの怒りさえも吹き飛ぶ。