「────なぁ来光、さっきの誰?」
被害者生徒が入院しているという病院へ向かう道すがら、我慢できなくなった来光くんがそう尋ねた。
慌てた様子で泰紀くんがバカ!と小声で窘める。
友達の話題には触れないでおこうって少し前に話したばかりだ。
「あは、気遣わなくていいよ」
私たちがあえてその話題に触れていないことに気付いていたらしく、来光くんは笑って肩をすくめる。
「小学生時代の友達なんだ。三好正信、同じクラスだったのは小六の時だけだったんだけど、出席番号が前後で仲良くなったんだ。クラスで浮いてた僕にも態度を変えずに接してくれてさ」
正信、だからノブくんなんだ。あだ名で呼ぶくらいだからきっととても仲良くしていたんだろう。
「前に言ったよね、悪いことばっかりじゃなかったって。ノブくんがそうなんだ。僕の唯一の親友……だった」
来光くんは自信なさげに目を伏せた。
過去形にしたのはさっきの正信くんとの微妙なやり取りが起因しているんだろう。
「6年の3学期……ちょうどその頃に神修への進学が決まったんだけど、僕その頃から卒業まで一回も小学校通ってないんだ。いわゆる不登校、みたいな」
ぽつりぽつりと話す来光くん。でもその表情は前よりも無理をしていない。
来光くんが私たちに聞いて欲しくて、話しているのだと分かった。