ノブくん、と呼ばれた彼が振り返る。その表情からは少しの気まずさと戸惑いが感じられた。
「お前、来光……?」
「そう! 覚えててくれて嬉しい、久しぶり!」
大股で歩み寄った来光くんに、彼は一歩後ずさる。
「お、俺急いでるから」
「え……ノブくん?」
その場から逃げるように走り出した彼に、来光くんは困惑した表情でその背中を見つめる。
あっという間にその背中は見えなくなった。
「来光の友達……にしてはつれねぇな」
「お前小学生時代はロクな友達いねぇのな!」
馬鹿!と嘉正くんに頭を叩かれ、慶賀くんは身を縮めた。
可哀想だけれど嘉正くんと同意見だ。
流石に今の言葉は地雷過ぎる。
「ずっと仲良かったと思ってたんだけどなぁ……」
そう呟いた声は少し寂しげで、嘉正くんと顔を見合わせ二人して慌てて身を乗り出す。
「ほ、本当にただ急いでただけだじゃないかな……!」
「そうだよ、巫寿の言う通りだ。今度会った時は向こうから話しかけてくるよ」
ぶんぶんと縦に首を振って肯定する。
そうだよね、と少しだけ元気を取り戻した来光くんにホッと息を吐く。