「……外では何も起きてないから、中の情報しか集まらないって風にも考えられるよね」

「それ、僕も思った」


隣で聞いていた来光くんが同調する。


「僕らみたいな学生寮暮らしなら中の情報だけってのも納得できるけど、彼らは違うよね。同居してる家族がいる。もし何か変わったことがあれば、その家族伝に聞いているはずだ」


私が考えていた事を綺麗にまとめて言ってくれた来光くん。隣でうんうん頷く事しか出来ないのが少し情けない。

嘉正くんが「それだ」と指を鳴らした。



「となると、捜索範囲は学校内に絞っていいって事か?」

「だね。ひとまず今聞いた話を一度整理して、何か見落としがないか確認────」



不自然に言葉を停めた来光くんに、皆が顔を上げた。

少し目を丸くした来光くんが一点を見て固まっている。

その視線の先を辿れば、見覚えのある顔の男の子がじっとこちらを見て立っている。西院高校の制服を着た、大人しそうな男の子だ。

すぐにサッと顔を背けて歩き出した背中に来光くんが駆け出した。



「────ノブくん、だよね!」



おそらくそれは渾名なのだろう。名前を呼んだその声には親しみの色が含まれていた。