三回通して舞ったあと、ちょっと不安の残る箇所を一つ一つ鏡の前で確かめていると会議室のドアがノックされた。

振り返ると半開きの扉からひょこりと顔をのぞかせた巫女頭と目が合った。



「30分前だから着付けを手伝いに来たんだけど────必要なさそうね。さすが月兎の舞に選ばれただけあるわねぇ」



ぐるりと私の周りを一周した巫女頭は満足気に頷く。



「ち、違いますよ。あれは最初から選ばれたんじゃなくて、代打で選ばれただけなので……」

「あらあら謙遜しちゃって。代打でも上手な子が選ばれるのよ。ちょっと前から覗いてたけど、踊り方が泉寿(せんじゅ)さんにそっくりでびっくりしちゃったわ」



突然上がった今は亡き母の名前に目を瞬かせる。



「お母さんのことご存知なんですか?」

「勿論よ。よく夫婦揃ってほだかの社へ遊びに来てくれたし、神楽部では二学年下の私にもとても良くしてくれたの」



意外な事実に目を瞬かせる。

お母さんが舞がとても上手だった事は知っていたけれど、まさか私と同じ神楽部だったなんて。

驚きと同時にふと疑問が浮上する。


禄輪さんが確か今49で、お父さんと同い年。お父さんとお母さんは二学年違いで、お母さんと巫女頭も二学年違い。

となると巫女頭って今────。