────始まりは、多分サッカー部の一年です。半年前くらいに、サッカー部の男子五人が遊んでた拍子にガラスに突っ込んじゃう事件があって。突っ込んだ一人は全治二ヶ月の大怪我で、そばに居たほか四人も破片が刺さって大混乱になったんです。大怪我を負った男子曰く、背中を誰かに押されたって。その時丁度その男子の後ろにいた一人が全員から責められて、今もハブられてて。はい、そうです。その人も怪我したのにちょっと可哀想っていうか。まぁでもその人たち普段から先生に目付けられてるし自業自得っていうか。
────私たちの去年の担任、今は一年を担当してるんだけどね。その先生が体調不良で学校やめたんだよね。んー、二ヶ月前くらいかな? それまでちょいちょい休んでたみたいだけど。熱血でちょっとウザかったけど良い先生だったのにね。
────隣のクラスの、ほら学級委員の子。なんか急に性格変わったよね? 前まで誰にでも優しかったのに、なんか今は近寄り難いって言うか。
嘉正くんと恵衣くんのコンビが下足場から出てくる女の子たちに次々と声をかけた結果、報告書にはなかった不可解な出来事が次々と明るみになった。
「なるほど、そんな事があったんだ」
「はい……! もう私たち怖くて怖くて」
「ねー! 怖いよね!」
頬を赤くした女の子二人が嘉正くんたちを見上げる。
「話してくれてありがとう。気をつけて帰ってね」
嘉正くんに肘で横腹を小突かれた恵衣くんはゴボッと苦しそうにむせると眉を釣りあげながらも何とか笑みを浮かべて「……助かった」と二人に礼を言う。
そして女の子二人組は、それじゃあまた、と何かを期待するような顔で何度も名残惜しそうに振り返りながら帰って行った。