「笑えよ恵衣、貴重な情報提供者だぞ。お前が可愛く"お願い"って語尾にハートでも付けて言えば何でも聞き出せるって」
泰紀くんがそう耳打ちをする。
恵衣くんの色んな感情を堪えるために握られた拳がぶるぶると震えていた。
これは調査のためのいうよりも完全に悪ノリに近い気がする。社に帰った時がかなり怖いのだけれど、みんなは大丈夫なのだろうか。
「お願い、します」
流石に「お願い」は厳しかったらしい。恵衣くんは口角を引き攣らせながらもなんとか笑った。
「やっぱり駄目?」
手を合わせた嘉正くんがほほ笑みを浮かべて二人の顔を伺う。
女の子二人は「じゃあ……少しだけ……」と頬を染めて頷いた。
隣でピコン、とスマートフォンの録画機能を停止させる音が聞こえた。慶賀くんが一部始終を撮っていたらしい。
本当に帰った時が怖いんだけれど、大丈夫なんだろうか。