バスから降りた私たちは各々に伸びをして「疲れた〜」とこぼす。神修にいるとこういう人がたくさんいる場所にはすっかり縁がなくなるから人混みはどっと疲れる。


「西院高校ってどっちだっけ。バス降りて右?」

「なんかこっちの方面だった気がする!」


走り出そうとした二人の襟首を嘉正くんが捕まえる。


「こら野生児二人、野生の勘で行こうするな。今調べるからちょっと待って」

「一昨日訪ねた場所すら覚えてないのか? これだからお前らと組みたくないんだ」


すっかりいつもの調子を取り戻した恵衣くんが鼻を鳴らしてスタスタと歩き出す。私たちは慌ててその背中を追いかけた。


「何だよ恵衣! じゃあお前は教科書一回読んだら全部覚えられんのかよ!」

「しょうもない。当たり前のことを聞くな」


慶賀くんの渾身の売り言葉はその一言で一蹴される。

まぁそう答えるよね、と苦笑いを浮かべる。

クラス一の秀才は教科書の中身を一度で覚えることなど造作ないのだろう。ちなみにクラスで2番目に賢い嘉正くんも教科書は一度読めばほぼ暗記できるタイプらしい。