そっと顔を上げると、いつもの不本意そうな顔が私を見下ろしていた。


「お前……」

「私?」


口篭る恵衣くんに首を傾げる。

ギュッと唇を一文字に結んだ恵衣くんは目を閉じで眉間に皺を寄せ一呼吸置いた。


「お前、誰にも話してないよな?」


抽象的な物言いに首を傾げた。

話してない? 一体なんのことを────あ。



「恵衣くんが鬼が苦手ってこ────」


見た事がないほどの物凄い形相で睨まれて口を閉じた。


「口に出すなって言っただろ!」


小声でまくし立てる恵衣くん。怖い顔をしているはずなのにあまりにも必死に見えておかしい。

笑いを堪えながら答える。


「誰にも話してないってば。言わないって約束したんだし」

「本当だろうな? じゃあ何で三馬鹿が今朝から俺の事ちらちら見てくるんだよ!」



そうだったっけ?とみんなの様子を思い出す。

『なぁ恵衣の後頭部いつもより若干膨らんでね?』

『ヒヒッ、めっちゃデカいタンコブ出来てんだろうな』

『ぶつけた拍子にあの尖った性格も丸くなれば良かったのに』


確かに今朝からちらちら何度も見ていたかもしれない。


「……心配してたんだよ皆」

「何だよその妙な間は」


じっと見つめられて視線を泳がせる。