奉仕が終わった後、禰宜から許可をとって白袴から制服に着替えた私達は西院高校を目指しバスに乗り込んだ。

時刻はちょうど16時半を少し過ぎた頃で、バスの中は帰宅する学生で溢れかえっていた。

どんどん人が乗り込んできて後方に追いやられる。手すりに捕まる前にバスが動きだし「わっ」と心の中で声を上げると同時に二の腕を掴まれた。そのまま腕を引っ張られて手すりを握るよう促される。

顔を上げると呆れたようにこちらを見下ろす恵衣くんの冷めた目と視線がぶつかった。


「あ、ありがとう」

「他人に迷惑をかけるな」


ごもっともだけれどもっと別の言い方は出来ないのかと頭が痛くなる。

そう言ったところで鼻で笑われて無視されるだけなので、とりあえずこれ以上文句を言われないように銀の手すりを握り直した。


窓の外をじっと見つめていると反射した硝子に、何かもの言いたげに視線を彷徨わせる恵衣くんが映った。

そういえば社務所で話し合いをした時も同じような態度だったことを思い出す。

そしてバスの停車駅を二つすぎた頃に「……おい」と頭の上から声が掛けられた。