「お、おかえり巫寿ちゃん」
「どうだった?」
居間に戻るとみんなはテレビを囲んで白熱したカーバトルを繰り広げているところだった。
後ろで見守っていた来光くんと嘉正くんが手招きする。二人の隣に腰を下ろした。
「大丈夫そうだったよ。私が行った時に丁度目が覚めて、病院も必要ないみたい」
「そう、なら安心だね」
「頭打った拍子にあの口の悪さも治ればよかったのに」
来光くんがふんと鼻を鳴らす。
ちょっとそれは厳しいかも、と肩をすくめた。
「おい鬼市バカ! お前赤い甲羅投げんなよ! ああっ抜かされた!」
「うおおっ、ここにバナナ置いたの鬼市か!?」
「下手くそ」
白熱するカーバトルを三人の背中越しに眺める。どうやら鬼市くんが優勢らしい。そしてそつなく一位でゴールした鬼市くんに二人はジタバタと悔しがる。
「何だよめっちゃ上手いじゃん!」
「最近鞍馬の神修でマリカ流行ってんだ。じゃ、アイスはドベの慶賀の奢りで」
「クソォ!」
どうやら賭けマリカだったらしい。
ほら買いに行くぞ、と鬼市くんが立ち上がったその時、「おい鬼市!」と彼の名前を呼ぶ声がして窓の外が急に騒がしくなった。