「絶対に誰にも、特に三馬鹿には言うな────言わないで、ください」
ごめんなさいとありがとうが下手くそな人だと知っていたけれど、お願いも下手くそなんだなと少し笑う。
つくづく不器用な人だ。
「人の弱みを言いふらしたりしないよ」
「断じて弱みではない」
これ以上笑うと本当に怒られそうなのでグッと堪えて「そうだね」と頷く。
「じゃあ本当にそろそろ行くね。えっと……お大事に」
「……ああ」
立ち上がると同時に恵衣くんはするりと手を離した。歩き出すと背後で布団に潜り込む音が聞こえる。
静かドアを閉めてみんなの待つ居間へ向かった。