恵衣くんは慶賀くんと泰紀くんの三人で大部屋を借りているらしい。ドアをコンコン、と軽くノックしてみたけれど返事はなかった。


「お邪魔します……」


小声でそう声をかけてそっとドアを押した。

和室の隅に敷かれた敷布団が膨らんでいるのが分かった。まだ目は覚めていないらしい。

足音を立てないようにそっと近寄ると、穏やかな寝息が聞こえた。恐る恐る顔をのぞき込む。

覗き込んで、思わず笑いそうになった。


恵衣くんって眠ってる時も難しい顔してるんだ。


ぎゅっと眉間に寄った皺は起きている時と変わらなくてちょっと面白い。寝ている時くらいリラックスすればいいのに。


その時、小さく唸り声をあげて恵衣くんの瞼が僅かに震える。ゆっくり開いた目はしばらくぼんやりと天井を見上げ、やがてゆっくりと私に視線が向けられる。


「だ、大丈夫?」


目はあっているが反応はない。

沈黙が十秒くらい続き、「恵衣くん?」と名前を呼んだその瞬間、ぼんやりしていた目がカッと見開かれた。


布団を蹴飛ばして起き上がった恵衣くんに思わず「うわっ」と仰け反る。



「────いっ……」



ぶつけた箇所に響いたらしい。

顔を顰めて後頭部を抑えた恵衣くんは布団の上でうずくまった。