「────千江さんは"様子みてこい"って言ってたけど、今はそっとしておいた方がいいと思うんだよね」



嘉正くんがそう言って肩を竦める。私達は顔を見合せて「確かに」と苦笑いを浮かべた。

怪訝な顔をした鬼市くん。


「恵衣って結構プライド高いからさ、多分俺らがお見舞いに来たらめちゃくちゃ嫌がると思うんだよね」

「クラスメイトが心配して見舞いに来ても嫌がるのか? 変なやつだな。面倒くさい彼女か」


その一言にみんな吹き出す。

鬼市くんって結構ハッキリものを言うタイプらしい。


結局ジャンケンで負けたひとりがこっそり様子を見に行くことになり、そのひとりは私に決まった。

気を失っている人のお見舞いにジャンケンで負けた人が行くのはどうかと思うが、恵衣くんの尊厳を守るためにも一人で行ってこっそり様子を見て戻ってくるのが良さそうだろう。


「居間で待ってるから」と見送られ、恵衣くんの借りている部屋を目指した。