「────どう? 何か掴めそう?」


瞑っていた目をうっすら開けて目の前に座る志らくさんを伺う。

今日も相変わらずあぐらをかいて、両手を広げ天を仰いでいた。


「あの、すみません。正直言うと何一つ分かりません」

「アハハ! やろうな!」



吹き出した志らくさんは目尻の涙を拭いながら私を見た。

昨日から御依頼を担当することになって、放課後はしばらく鼓舞の明の練習が出来そうにないと志らくさんに相談すると「ほんなら、朝拝の前にやるか?」と提案してくれて、"鼓舞の明マスター講座"は今日から朝に開催されることになった。

かれこれ数回目の開催になるマスター講座だけれど、初日に基礎を教わって以降何一つ進んでいない。


「そもそも授力って、体のどの辺りにあるんですか? 言霊の力は血液みたいに全身を流れてるんですよね?」


鼓舞の明を扱うには、自分の中にある鼓舞の明に刻まれたリズムを見出さなければならないらしい。

そのために"鼓舞の明"を感じなければならないのだけれど、そもそも鼓舞の明がどこにあるのかが分からないので何も始まらない。