この時期はどの社も忙しいけれど、由緒ある大きな社は一段と忙しいんだろうな。
となると薫先生は本当にサボっていていいんだろうか。
また端末がポロンと鳴って、突然人混みの中に入ったような騒がしさが耳に届く。
ビックリして耳から端末を離すと今度はテレビ電話が始まっている。カメラを有効にして参加し直せば、パッと画面が切り替わって白衣に白袴の泰紀くんが画面に映っていた。
続けざまにみんなの画面が切り替わっていく。
『うるせー! 泰紀の仕業かよ! お前どこにいんの?』
『外だよ外! 丁度あと三十秒後に報鼓鳴らすから今社頭のど真ん中にいんだ! どうせお前ら家ん中だろ? いい音響かせてやるから聞いとけ!』
カメラを外に切り替えた泰紀くん。
カメラが向けられて、参拝に来ていた人達が「わーい!」とこちらに手を振った。
丁度、私がいるほだかの社の社頭でもカウントダウンが始まった。
『ギリギリで全員揃ったな!』
『だね。皆今年一年ありがとう!』
『色々あったねぇ』
『なかなか濃い一年だったよな〜』
思い返せば平穏だった日の方が少ないかもしれない。それほど騒がしく忙しない一年だった。
カウントダウンが一桁になった。
「来年もよろしくね……!」
おう!と返事があった次の瞬間、スマホから、社頭から、体の芯に届くほどの太鼓の音が響いた。
わあっと歓声が上がる。