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レコーディングは順調にすすんだ。時に飛田の怒号が飛んでいたが、なんとか完成に向かっている。
真里が思っている以上の出来栄えである。そして最終段階の、真里の歌声をとる時がきた。
ヘッドホンをしてマイクの前に立つ真里。
今回参加したメンバーたちが真里がいるブースとは別の正面の部屋からガラス越しに見守る。

「やり直しはきくけど、一発勝負だと思って気持ちぶつけな。ピッチなんてあとであたしが修正してやっから」

真里のヘッドホンから飛田のそんな声が聞こえる。
べつに大観衆の前で何かをパフォーマンスするわけでもないのになぜか真里は緊張していた。
真里はいつしか深見言っていたことを思い出す。そして妙に納得した。
バスケの試合の時、体育館のコートに立つとギャラリーには色んな人たちが自分を見ていて、とてつもなく緊張する瞬間があると。
何かヘマをしたら一斉に自分にブーイングが突き刺さるのではないかと不安になる、そう言っていた。
だから、音楽を聴いて心をしずめて集中する。自分は大丈夫。やれる。確固たる勝つイメージをもつのだ。

「お願いします」

ヘッドホンからみんなで作り上げた音楽が流れ出した。
す、と息を吸う。
この曲に込めるのだ。
深見への応援歌を。


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「すげえよ、相原。練習より気持ちがのってて、俺よく音楽のこと分かんねえけど最強の曲できたと思う」

レコーディングを終え、ブースを出た真里に九条がそう言う。そしてそれに共感するように周りも頷く。真里はなんだか照れくさくなって「そうかな」と頭をかいた。

「あとはコーラスだけど、池尻入れる?」

飛田がパソコンをいじりながらそう言うと、池尻が「練習ばっちりです」と立ち上がった。
レコーディングブースに入ろうとする池尻。真里は思い出したように「あの」と声を出す。みんなが真里の方をむいた。曲の構造を練っている時に真里には1つ思いついたことがあったのだ。

「あの、1つ提案があって」