あとがき


この度は本作を手に取ってくださり、誠にありがとうございます。
思い返せば、この物語を作ろうとしたのは2023年10月上旬ごろでありました。当時の自分は
「小説なんて1,2ヶ月あれば余裕で終わるでしょ。」
と思っていましたが、見通しが甘く終わったのは2024年の1月下旬ごろ。ほぼ4か月の月日が経過しておりました。
あぁ、予想より長くかかってしまったな…。
と、まぁそんな感じに思いながら初の小説チャレンジが終了した訳ですが正直
「初めての小説なのにこんな胸糞系(?)にするんじゃなかったなぁ…。」
と半ば後悔している訳ですが時すでに遅し。小説は完成してしまい、こうして皆様に自分の醜態を晒す結果となってしまったのです。

さて、そんな半ば後悔に終わった本作ですが、正直自分は(この話を書くなら)この結末しか無いな、と思っています。さっきと言ってる事が矛盾しているように見えますが、要はこの話は「小西君が自ら命を絶って国を守らないと成立しない」物語だったのです。
どういうことか、少し説明しようと思います。
本作を書く上で自分は一つ軸を決めました。
それは「現実世界を風刺すること。」
今我々が置かれている環境をそのまま物語上に置き換えて書いてみよう、というのが本作のテーマだった訳です。
例えば普段の生活。普段の生活では皆様の多くが何気なく生きているかと思いますし、自分もその1人です。皆社会のためにあくせく働き(とてもありがたい事ですが。)、社会の一員としてこれ以上ない程に大きな功績を上げているかと思います。
しかし一方で何のために働いているのか、何のために学んでいるのか、その理由すら熟考しないまま、ただ流されるがままに生き、その結果大きな失敗をしてしまう、そんな事もあったのではないでしょうか。そう、これはまさに、小西君と一緒です。違う点は失敗したら命を失うか、失わないか、それだけの話。そう、皆様は失敗しても命を失うことは殆どないのです。(マフィアとの対談とかはこの限りではありませんが、そんな事は普通滅多に起こりません。)しかし…。いや、だからこそ失敗をしても失うものが殆どなく、何も失敗から学ぼうとしないのではないでしょうか。そして、その積み重ねはいつか、更に大きな失敗を生みます。そうなる前にいまの皆様の現状について、今一度考えて欲しかった…。その為には一度、失敗例を見てみるしかありません。そういう意味で小西君は死ななければならなかったのです。


しかし、小西君もあれだけ失敗してもまだ挽回できるチャンスはありました。それは、周りの人を頼る事。杉内君でも、桐原君でも、あるいは西村機関長でも誰でもいいんです、誰かに今の状況が辛いと、そう吐露できていれば小西君にかかる重圧はかなり減った筈ですし、何もかも全て小西君1人で抱え込まなくても良かった筈です。
しかし、小西君はそれをしませんでした。奴隷を死ぬまで働かせていた件でアリアを糾弾する事はあっても、士気の低下を危惧して誰にも相談しませんでした。結局、それによって小西君の心労は日に日に増えていき、結局逃げるようにして自爆の道を選んでしまいました。小西君がもっと人を頼っていたら…もしかたらアリアと仲直りして戦後共に国の復興を支えた、何て未来もあったのかもしれません。

しかしそれでも、いくら追い込まれたからと言って自ら命を絶つことは断じて許されません。しかも、その事は小西自身もよくわかっていた筈です。なぜなら、モンナグが自らを犠牲に残存する防衛艦隊を逃がそうとしたときに小西君はモンナグに対してこう言っています。
「モンナグ隊長、お願いですから戦場に巣食う死に魅入られないで下さい。あなたほど戦場に慣れた人なら分かるでしょう。人は、戦場で窮地に立たされれば立たされるほど周りの人間を救う為に自らを犠牲にする人がいる事を。モンナグ隊長、貴方は今まさにその自らを犠牲にする人になっている。貴方はまだここで死んではいけない人だ。この国の人間は、貴方を必要としているのです!」

この発言をしているのにも関わらず小西君は戦場に巣食う死に魅入られ結局命を絶ってしまいました。彼が辛い立場にいた事はよく理解できます。しかし、それでも死んでしまってはどうにもならないのです。
小西君が犯した最大の失敗は、誰にも相談せず、自分だけで背負い込んでその結果勝手に自殺の道を選んだ事です。
それこそ先程書いたように誰かに相談していれば間違いなくこの事態は防げた筈。皆様は、このような過ちは犯さぬよう、よろしくお願い致しますね。


そしてもう一つ、言いたい事があります。それは、本当の悪役なんてこの世界には存在しない、という事。悪役、というのはどちらか一方から見た存在であって、悪役にもそれなりの行動をする理由があるはずだからです。
例えば最近よく見られる悪い王様が勇者を追放して…なんていう話。これも王様がただ性格が悪いから勇者を追放した、というのでは物語に深みがありません。(別につまらない訳では無いです。私の好きな物語の中にもこうしたものは沢山あるので…。)この王様が勇者を追放する、という一連の行為に…例えば王国の財政難が絡んでいたり、隣国との勢力バランスの関係上追放せざるを得なかったたり…なんていうストーリーを少し追加するだけで物語としての深みがグッと増してくるはずです。そしてそのような物語は悪役を悪役たらしめる事はなく、物語にリアリティを生み出します。
そうした物語こそが、真に深みを与えられた物語であり、今後社会に求められていく小説なのではないでしょうか。

そうした理論のもと、私は今回、主役側であるディ・イエデも、敵役であるレミレランド帝国も、悪役を明確化しないため、お互いに戦う道を選んだ理由を与え、お互いにやってはならない行為があったことを明確にしました。
その上で私は皆さんに問います。正しさとは、一体何でしょうか。小西君が感じた「正しさ」は、果たして本当に正しかったのでしょうか。もし正しくないのであればこの物語の中で何が正しかったのでしょうか。…これを私はこの物語の中で皆さんに考えて欲しかったんです。そしてそこで考えた「正しさ」は、今後皆さんの価値観を構築していく上で大きな助けとなるはずです。


さて、もう暗い話は置いておいて、今後どうしたいかを少し書いていこうかと思います。
今回初めて小説を書いてみて、意外に小説が楽しいことが分かりました。何というか、楽しいもんですね。頭に浮かんだものをそのまま文字に書き起こすって。難しいですが、その分できた時の達成感も中々病みつきになります。なのでまた時間がある時に小説、もしくはそれに準ずる何かを書いてみようかな、やってみようかな、そう思っています。 
皆様も一度少しでいいので小説を書いてみませんか?意外とハマると思いますよ。
特に理系の人。自分も理系でここまで楽しめたので理系の貴方がたも楽しめるはず。一度チャレンジしてみるのもありかもしれませんよ。

さて、仮に次話を作るならどんな話にしましょうか。自分は個人的に最強が暴れ回るよりも弱い人が努力を積み重ねて地位を得ていく方が好きなタイプなので…そういう話を書くか、あるいは異世界を飛び回る蒸気機関車の話とかを書いてみるのもいいかもしれません。いずれにしてもしばらくは小説はいいかな。一年くらい休んだら次の話書こうかなと思っています。

長い話にここまで付き合ってくれた方、ありがとうございます。
今後とも良き小説ライフを送ってくださいませ。


南無阿弥高校 脚本担当  秋 未國