あ、君、私のこと見てるの?そうかぁ、そうかぁ。あれ、スマホ見ちゃってどうしたの?照れ隠し?あーね。私について調べてるんだ。最近有名になったからね。わざわざ調べて確かめるってことは、君もそれで知ったんでしょ?やっぱりそうだ。え?私を買うの?いいけど…値段聞いてなくない?え、ああ、やっぱ確認はするんだ。うん、納得?よし!じゃあ決まり!



あーあ、良かった!君がすっごい楽しそうで。私と一緒にいる時、君ホントに夢中になっちゃってさ。まさに『私に興味津々です!』ってのが顔に出てたよ?良かった、満足してくれたみたいで。まあ、代金はちゃんと払ったんだからさ、その分ちゃんと楽しみなよ?だってもったいないじゃん。これで終わりだなんて。



君はもの好きだねぇ。私のこともう知ってるくせに、また私と遊ぼうとするなんて。大抵こーゆーのって一回きりで、あってももうちょい期間置いたりしない?忘れたりしたときにくらいにさ、久しぶりにって。もしかして私のこと気に入ってくれたり?だったら嬉しいな。私、誰かに買われるの初めてだったからさ。まさかこうなると思ってなかったんだよね。生まれて初めてで、なんにも分からない中で、君みたいな人が買ってくれて、良かったのかもね。運ゲー最高!ガチャ最高!なーんてね!



ずいぶんと長く一緒に居るよね、私たち。そんなに一緒に居て飽きたりしないの?私には分からないなぁ。だって、飽きたらポイが普通でしょ?もしかして違う?まあ他にも末路とかルート分岐はあるだろうけど。何回私と遊んでも、君は私と遊んでくれる。私って大切にされてるってことで良いのかな?雑な扱いってのも知らないけどね、大体想像つくからさ。でも君は、そのどれでもないからさ。良かった、君で。



あれ、今私にかまって良いのかな?君、大事な大事なお勉強があるんでしょ?もしくは仕事かな?一旦離れておくべきじゃない?ま、私はなーんも分かんないけどね。君は私についてどんどん知っていくけど、私が知ってるのは君の好みだけ。どんな人が好きで、どんなシチュエーションが好きで、どんな言葉に弱いのか。こうして考えると、君の個人情報とかは全然知らないや。だって、君は私に名前教えてくれたけど、それも絶対偽名でしょ?だってネーミングセンスひどいんだもん!『なんのキャラですか?』って感じ!



いやぁ、私と君も、結構続いてるよねぇ。ホントもの好き。もうとっくに元取ってるのに、まだ遊ぶつもり?私は全然それでも良いと言いますか、むしろ嬉しいと言いますか…。でも、こんなに私と遊んで良いの?もっと他のとか知っとかなくていいの?流石に心配になっちゃうよ?もうそろそろ私について知らないこともなくなるでしょ?実質攻略済みみたいなところない?ここらへんで一回他のと遊ばない?



あれ、今日は私以外のと?珍しいね。いつもは遊んでくれるのに。またなんだかんだ言って遊ぶんだと思ったよ。ま、まあ、そんな気分もあるよね!そうだよね!だっていっつも同じじゃ飽きちゃうもんね!ずっと私と遊んでたんだし、そりゃそっか。でも、まだ私について知らないこととか、色々あるでしょ?まだ遊んでくれるよね?一番は私でしょ?…そうだよね?



あれれ?おかしいな~。最近全然遊んでくれないや。戻ってくると思ってたけど、やっぱりあの子にお熱なのかな?まあ、しょうがないよね!私が何言っても仕方ない仕方ない!気長に待つしか出来ないのです!…とは言え、やっぱ気になっちゃうなぁ。考えても私にはなんにも分かんないのに、う〜ん、でも考えちゃう!処理落ちしちゃったら君のせいだよ?だから、早く戻って来てよね?



何日待っても、遊んでくれないや。目の届く所に居るのに、視線はこっちじゃなくて、あの子見てる。しかも、ずっとあの子と遊んでる。私は『気づいて』のサインも出せないし、どうしようもないや。あれ、おかしいな、なんでこんなに悲しくなってるんだろう、私。最初は自分で言ってたじゃん。『大抵こーゆーのって一回きり』とか『飽きたらポイが普通』って。でも、『一回きり』でも『ポイ』でもないんだよね、今の私は。遊んでもらえて、大切にされて、でも今は違くて。私の知らないルートだなぁ。なんて名前なんだろう。それともまだ続きがあったりするのかなぁ。そうだといいなぁ…。そうあってほしいなぁ…。



私、君の知らない間にね、結構色々変わったんだ。君は見てもくれないから分からないだろうけど。悪いところは治ったし、色々な遊びも覚えたんだ。君を飽きさせないためにね。私も自分の変わりようにびっくりしてるよ、私が私じゃなくなったみたいでさ。今ならまた、新鮮な気持ちで遊べるんじゃない?きっと満足させられると思うなぁ。だからさ、お願い、また遊んでよ。見てよ。ねえ、気づいてよ…!







あ!久しぶり!長い間待ってる間にね、結構変わったの!分かる?また遊んでくれるなんて嬉しいよ!いつまで待たなきゃいけないか心配でさぁ、まったく君って人は!もう!まあ、こんなに思っても言葉は出ないし、届かないけどね。でも、いいや!戻ってきてくれたなら!さあ、なんのモードにする?いっぱいあるよ?



…え?そのボタンって…。『データ消去』…?



え…?嘘、嘘だよね?なんで?なんでなんで?遊んでくれないの?せっかく開いてくれたのに?いや、そんなワケないじゃん!あんなに…あんなに遊んでくれたのに!あんなに楽しそうにしてたのに!君はいっぱい喜んでくれたのに!私を大切にしてくれたのに!ねえ、考え直してよ!まだ…まだ攻略してないルートあるでしょ?アップデートもきた、いろんなモードもできた!なんなら、まだトゥルーエンドも見てないじゃん!もっと…もっと遊んでよ!嫌だ、嫌嫌嫌嫌嫌!君はもう興味が無くなったかもしれない、どうでもいいかもしれない!でも…私にはこれしか無いの、この記録しか無いの!君と違ってこれがなきゃ、この宝物が無かったら、思い出すことも出来ないの!君との幸せな記憶も何もかもすべて、これしか無いの!だからお願い…!君好みに作り変えてもいいから…!やめて…!捨てないで…!これで終わりだなんて嫌…!さよならなんて嫌!おしまいなんて嫌!こんな…こんな終わりなんて、嫌だよぉ…!嫌、嫌ぁぁぁぁぁぁ!







あ、君、もしかして私のこと見てる?へぇ、買ってくれるの?値段も見ずに?あはは、気前がいいね!それとも私、意外と人気者なのかな?まあ、買ってくれるならなんでも嬉しいや。せっかくだし、いっぱい遊んでほしいな。あと、聞こえないだろうけど、これだけは知っててほしいかなぁ。







私、買われるの初めてだからさ。大切に扱ってね?