《Dear 颯斗さんへ

今日までサヤの恋人役を演じてくれてありがとうございました。

実は颯斗さんと出会ったのは四年前。
私は当時十六歳でした。
小さな冒険心で寄り道したコンビニで颯斗さんと出会いました。》



「へぇ、俺達はそんな前に出会ってたんだ……」



《その日は生まれて初めて一人でコンビニへ。

籠の中の鳥として育ってきた私には、コンビニという小さな世界は何もかもが新鮮でした。

物珍しさのあまりゆっくり商品を眺めていたら、突然店に強盗が入ってきてすぐ傍にいた私を人質にしたのです。


従業員として働いていた颯斗さんは犯人の背中側から覆い被さって、私を解放してくれました。


正直、怖くて震えが止まりませんでした。
犯人が振り回したナイフで切り刻まれた颯斗さんの左手の甲から床へと滴る血と、力づくで犯人と争ってる姿。
私は今まで見た事のない光景に怖気付いてその場から逃げてしまいました。》



「サヤはあの時の人質……。だから、何度も手の傷の話を……」



《店を出てから外で待機していた車の中に飛び込んで、車を発車させた直後に後悔しました。
颯斗さんは危険を顧みずに助けてくれたのに、どうして自分は逃げてしまったのかと……。



「それが正解だよ。サヤが怪我をしなくて良かった」



《翌日、お礼を伝えようと思って店を訪れたら、颯斗さんは高校卒業を機に店を辞めたと。

もう一度会えると思っていたのに、もう二度と会えないと思ったら胸が苦しくなりました。
何故なら、あの一瞬で恋に落ちてしまったから。


本当はすぐに探したかったけど、家庭の事情で探せませんでした。
大学に進学してから少しだけ自由な時間が生まれたので、運転手と共に都内のコンビニを周って颯斗さんを探しました。

どうしてコンビニを探したかというと、慣れてる仕事に再び就く可能性があると思ったから。