窓の外は空一面に雲が覆いつくす中、颯斗はアルバイト先のコンビニで鼻歌混じりで発注作業をしていると、レジで手が空いたばかりの谷中の目が止まった。
「鈴木さん、今日はやけにご機嫌じゃないっスか」
颯斗は発注機のタブレットから手を止めて、待ってましたといわんばかりのニヤケ顔で振り返った。
「実はさ、あさって彼女に告白しようと思ってて。それを想像するだけでも幸せと言うか……」
「えっ、あの100万円の彼女に? マジで好きになっちゃったんっスか?」
「いつしか大切な人になってた。あいつは全然笑わないし、何かあったら金で解決しようとしてたし、最初はロクでもない奴だな~って思ってたけど……。蓋を開けてみたら、不器用だし、バカみたいに純粋だし、真っ直ぐに想いをぶつけてくるし。気付いたらこの先も傍にいてやりたいなって」
例え偽物の恋人であっても、今日まで自分のやり方で真剣に向き合ってきたし、彼女の価値観を大切にしてきた。
今こうしている間にも何をしてるのかなって。
またこっそり恋人100選でも読んでるんじゃないかなって。
一人で出掛けていたらどうしようかなって。
落ち込んでたら嫌だなって。
離れている時間が気になるし、会いたい衝動に駆られている。
「へぇ〜。彼女と上手くいったら玉の輿になるから一石二鳥っスよね」
「おいおい、勘違いするな。そんな邪な考えを持ってねぇし」
「なーんだ。てっきり最初から金目当てかと」
「ばーか。あいつは純真純白で洗礼された子なの!」
俺は幸福度が自然と顔に出ちゃうほど明後日が待ち遠しい。
気持ちに余裕が生まれる度に、告白のシュチュエーションや胸を打つような言葉を考えていた。
恋人契約をしたあの日から俺との時間を大切にしてくれている彼女に、これからは本物の恋人として一生の思い出を刻んであげたい。