「実は私、先日レンタル恋人を依頼してしまいました」

「えっ! 愛海さんが? 松井財閥のご子息とお付き合いしていたのでは?」


「先々週に『ロボット女』と言われてフラれてしまいました」

「沙耶香もあのお方とはお別れになられた方がいいと思っておりました。愛海さんの誕生日パーティーをすっぽかして、お母様のショッピングに付き添うなんて恋人としてはありえません。正直、魅力を感じない残念な男性でした」


「あの……、いつも素直に口を開いてくれるのは有り難いのですが、沙耶香さんは時に物言いが厳しくなる時があります」



幼稚園時代からの親友 愛海は、沙耶香の欠点をよく知っている。
無表情なだけに配慮が欠けてしまう事もしばしば。



「……沙耶香の悪い癖がまた出てしまいました。話は逸れてしまいましたが、それからどうされましたか?」

「人材派遣会社のカタログの中からお気に召した男性がおりましたので、恋人役をお願いしました」


「なるほど。それでレンタル恋人とはどう過ごされたのですか?」

「ファーストフード店に行って愚痴を聞いてもらったり、公園で手をつないだり。幸せなひと時が過ごせました。外の世界は何もかもが刺激的でした」


「籠の外へ羽ばたけない私には羨ましい話です」



そう……。
厳格な両親をもつ私は一日のスケジュール管理がされていて自由が利かない。
外部との接点なんて以ての外。

だから、彼女の冒険行為は少し羨ましく感じた。