「サヤ、ただラリーするだけじゃ面白くないから、しりとりしながらラリーしていこうか」
「それはいい提案ですね。やってみましょう」
「じゃあ、俺から。しりとり」
「り……リムジン」
沙耶香がそう言った瞬間、しりとりが一瞬で終えたと同時にシャトルも落下した。
二人の間に微妙な空気が流れる。
「あのさ……。しりとりは『ん』がついたら終わりだろ。ラリーと一緒で続いてないし。じゃあ、また俺から行くよ。普通にりんご」
「ゴールド」
「ド……ドーナツ」
「ツ……ツ……ツリーアゲート」
「なんだ、それ? 聞いた事ないな。まぁ、いいや。ト……とうだい」
「イ……イ……インカローズ」
「(さっきから何言ってるかよくわからないな)ズ……ズワイガニ」
「にしきごい」
「い……インコ」
「コ……コ……個人経営者」
沙耶香がそう言うと、颯斗はラケットでシャトルを救いきれずに大爆笑した。
「あははははっ……。しりとりで個人経営者はないだろ。ねぇ、普通のしりとり出来ないの?」
「えっ」
「内容をよく聞いてたら、しりとり自体も金持ちくさいんだけど」
「サヤは普段からこんな感じですけど……」
「そっかそっか、笑ってごめん。じゃあ、シャベル」
「ルーマニア王国」
「そうきたか。じゃあ、熊本城」
「烏骨鶏」
「糸」
「倒産」
「おいおい、不吉だなぁ……。ってか、しりとり終わってるし。サヤのしりとりストーリーを繋げていくと金持ちからの転落人生だな」
「それじゃあ、次は貧乏からの成り上がり人生しりとりをしましょ」
「了解! しりとり」
「颯斗さん! また最初からですか〜」
それから二人はネタが尽きるまでバドミントンを楽しんだ。
沙耶香にとっては勿論、颯斗にとっても楽しいひと時が過ごせた。
その後、斜面の芝生にレジャーシートを敷いて、颯斗が作ったお弁当をぺろりと平げた。