そんな限られた時間の中で、愛海はティーカップに手を添えながら口を開いた。
「沙耶香さん、レンタル恋人というものをご存知でしょうか」
「……いえ、それはどういったものなのでしょうか」
「レンタル人材派遣会社に登録された方が、依頼主の報酬と引き換えに恋人役を演じるという職業でございます」
「アルバイト……ですか」
「その通り。依頼主はレンタルカタログに記載されてる写真とプロフィールからお気に召した方を選んで、物を借りるような感覚で恋人役をレンタルできるというシステムなのです」
「なるほど。レンタルされる側は役者を演じるのですね」
「えぇ。ただ、本物の恋人ではございませんので、依頼主がお気に召しても進展は望めません」
「面白い職業ですけど……。依頼人は何の為に利用するのでしょうか」
「そっ、それは……。人それぞれの事情がありますのでよく分かりませんが……」
「沙耶香はレンタルよりも本物の恋人を作った方が幸せだと思います」
籠の中の鳥として生きてきた沙耶香にとっては刺激的な話だが、今後の自分には無縁だと思いながらカモミールティーで喉を潤した。