翌朝。
度なしメガネのことがばれた。
「八木ちゃん、昨日はごめんね」
「うん、大丈夫だよ…」
「うーん、でも…、ん?」
私は、一瞬小さく叫びそうになった。
カナが、私のメガネを外した。
「…やっぱり!!八木ちゃん、このメガネ、度なしでしょ!?」
「…ぅ、そ」
声も。手も。足も。全て、震えた。どうすればいいのか、わからなくなった。
「なんで!?絶対外した方が可愛いのにー!今度から外しなよ、八木ちゃん!」
わたしの素顔を見れたことに、カナは完全に興奮していた。それに、悪気がなかったとしても。
もう、私は限界だった。
「…なんで、勝手にするの」
「ん?何?もう一回…」
「なんで、勝手に私のものを決めつけようとするの…!!!」
気づけば、なぜか涙があふれ出ていた。
「度なしでもつけてたっていいじゃん!!桜の写真、きれいじゃなくても撮ったっていいじゃん!!そんなの、私の自由でしょ?なんで、それすらも奪われなきゃいけないの?最初から全部…!」
カナは黙っていた。
「全部決めつけないでよ!金沢さんはただでさえみんなの人気者なのに、どうしてこんな私のことまで構うの?邪魔だったり気に入らないんだったら、関わらなくていいのに!なんで!」
クラスメイトの視線が、私を刺している。
「私の自由を、これ以上奪わないで…!!」
あと、もう一つ。
「絶対に、あの桜のことだけは、もう何も言わないで…。お願いだから…!」
私はそれだけ言うと、トイレに逃げ込んだ。
「…八木ちゃん、ごめんね」
小さくつぶやいてカナの声は、届かなかった。
*
「ー…っ、カナ、大丈夫?」
「や、八木さんって、あーいうタイプの人なん…?」
「こぉーわっ。一人で盛り上がってんじゃんね」
「急に被害者ヅラ何」
「それな」
そんな野次馬からの発言なんか無視して、あたしは黙っていた。正直、八木ちゃんがあんなにも感情的な顔ができるなんて、思ってもいなかった。
でも、そのおかげで、ようやく我に返ることができた。はたかれたような、頬がヒリヒリする痛みが気持ち悪く覆いかぶさってくる。
人気者になると、こんなにおかしくなっちゃうんだね。八木ちゃん。
元々、こんなあたしになることなんか望んでなかった。でも、なぜか、いつのまにか、私は逆に、みんなから全て奪われるようになっていた。
だから、その仕返しをするためだった。八木ちゃんと関わった理由なんて、それしかない。
クラスで、学年で。
ただ一人、あの子だけが、私を慕わなかった。
みんなとちがう。ちゃんと自分の意思を持って、操り人形の中で一人、ちゃんと人間が踊っていた。
そんな姿が、かっこよかったのかもしれない。
でも、それとは真逆に、あたしはどんどんみんなに侵食されていく。どんどん、操られていく。
だからって、八木ちゃんに嫌がらせをするのって、あたしがやったことなのに、ひどいことだと思った。
人気者になると、善悪の区別さえ曖昧になっちゃう。
みんなが慕ってくれるから、許されると思っちゃう。
でもそれって、大間違いなんだね。
周りに流されていないような人には、うまくやってるつもりでも、見透かされてる。
八木ちゃんみたいに、何かを貫き通している人が、本当は一番強いんだね。
度なしメガネのことがばれた。
「八木ちゃん、昨日はごめんね」
「うん、大丈夫だよ…」
「うーん、でも…、ん?」
私は、一瞬小さく叫びそうになった。
カナが、私のメガネを外した。
「…やっぱり!!八木ちゃん、このメガネ、度なしでしょ!?」
「…ぅ、そ」
声も。手も。足も。全て、震えた。どうすればいいのか、わからなくなった。
「なんで!?絶対外した方が可愛いのにー!今度から外しなよ、八木ちゃん!」
わたしの素顔を見れたことに、カナは完全に興奮していた。それに、悪気がなかったとしても。
もう、私は限界だった。
「…なんで、勝手にするの」
「ん?何?もう一回…」
「なんで、勝手に私のものを決めつけようとするの…!!!」
気づけば、なぜか涙があふれ出ていた。
「度なしでもつけてたっていいじゃん!!桜の写真、きれいじゃなくても撮ったっていいじゃん!!そんなの、私の自由でしょ?なんで、それすらも奪われなきゃいけないの?最初から全部…!」
カナは黙っていた。
「全部決めつけないでよ!金沢さんはただでさえみんなの人気者なのに、どうしてこんな私のことまで構うの?邪魔だったり気に入らないんだったら、関わらなくていいのに!なんで!」
クラスメイトの視線が、私を刺している。
「私の自由を、これ以上奪わないで…!!」
あと、もう一つ。
「絶対に、あの桜のことだけは、もう何も言わないで…。お願いだから…!」
私はそれだけ言うと、トイレに逃げ込んだ。
「…八木ちゃん、ごめんね」
小さくつぶやいてカナの声は、届かなかった。
*
「ー…っ、カナ、大丈夫?」
「や、八木さんって、あーいうタイプの人なん…?」
「こぉーわっ。一人で盛り上がってんじゃんね」
「急に被害者ヅラ何」
「それな」
そんな野次馬からの発言なんか無視して、あたしは黙っていた。正直、八木ちゃんがあんなにも感情的な顔ができるなんて、思ってもいなかった。
でも、そのおかげで、ようやく我に返ることができた。はたかれたような、頬がヒリヒリする痛みが気持ち悪く覆いかぶさってくる。
人気者になると、こんなにおかしくなっちゃうんだね。八木ちゃん。
元々、こんなあたしになることなんか望んでなかった。でも、なぜか、いつのまにか、私は逆に、みんなから全て奪われるようになっていた。
だから、その仕返しをするためだった。八木ちゃんと関わった理由なんて、それしかない。
クラスで、学年で。
ただ一人、あの子だけが、私を慕わなかった。
みんなとちがう。ちゃんと自分の意思を持って、操り人形の中で一人、ちゃんと人間が踊っていた。
そんな姿が、かっこよかったのかもしれない。
でも、それとは真逆に、あたしはどんどんみんなに侵食されていく。どんどん、操られていく。
だからって、八木ちゃんに嫌がらせをするのって、あたしがやったことなのに、ひどいことだと思った。
人気者になると、善悪の区別さえ曖昧になっちゃう。
みんなが慕ってくれるから、許されると思っちゃう。
でもそれって、大間違いなんだね。
周りに流されていないような人には、うまくやってるつもりでも、見透かされてる。
八木ちゃんみたいに、何かを貫き通している人が、本当は一番強いんだね。