「「いただきます」」
今日は、春花でもつくれるカレーにした。春花が、おいしー…と言っている。
「ねえ、そのさ、仄花のクラスのカナはどうなの?またなんかされた?」
「んー…まあ、今日は私の撮った写真にちょっとした文句を言ってきたことくらい…」
「はあ!?まじでなんなの、いちいち絡みやがって!もうそれいじめだよ、本当!」
「いやいや、こういうのはよくあるし」
「よくあるっていうのがもう異常なんだよ!あー、まじでなんなの、カナ最悪!!」
カレーをやけ食いし始めた春花を止め、いいよいいよと言ってみせる。
すると、春花はため息をついて、私に指をさして言う。
「仄花、もうさ、ばばんと言っちゃおうよ。ていうか、もう私が言う!カナに直接!」
いや、流石に無理です。私がどれだけ臆病か、春花は知ってるでしょ?
完全にそう言おうとしているのが顔に出ているようで、春花はまたため息をはく。
「…仄花が内気だっていうのはわかるけどさ、いつまで経っても終わんないじゃん。どこかで、誰かがやらないと」
「私だって、何かきっかけがあればと思ってる…」
きっかけ。それは、私が卒業するまでに見つかると、確信できるものなのか。
自分で迷っていると、ますますわからなくなってくる。すると、春花が口を開いた。
「桜は?どうなったの?」
すっかり慣れた口調で言うもんだから、ああ、もうそんなにたったのか、と思う。
桜とは、今朝写真を撮っていた桜の名前のことと、その名前を教えてくれた男の人のことだ。
「まだわかんない。…というか、もう見つからないと思う」
そもそも、もう卒業している人を見つけるなんて、ただの野望に過ぎない。その人の通う大学を去年の担任に訊いたりすることだってできなくはないが、そこまでしてというわけでもない。しかも、大学に通っているかすらもわからない。成人しているのだから、どこかでもうとっくに働いていて、一人暮らしを…
「ほーのか!」
「あっ!」
もう、と言って、春花は続ける。
「とりあえず、本当に見つかるか見つからないかは置いといて、賭けに出てみればいいじゃん」
「か、賭け?」
なんか怖い!お金に関わることだったら、私無理…!!
つい最近そんなようなドラマを見たせいなのか、まさか妹から「賭け」なんて言葉が出てくるとは思わなかった。
「じゃあ、強制的に決める!仄花は、その男の人は必ず見つかるって方に賭けるの。それで見つかったら…その人に会えたってことで。私はその逆ね。利益なし。まあ、ただの遊びだけど」
春花は、きっと私のためを思って言ってくれているのだ。それだったら、やはりがんばるしかない。
「見つけるためには、仄花ががんばって行動しないといけないよね?」
それが、臆病からの卒業になるかもしれないし。
そのように、言っている気がした。
「…私、がんばって探してみる。」
無理かもしれない。でも、そんなの行動しなければわからない。
少しでも隙間から光が見えるのなら、そこへ向かってみたっていいじゃないか。
今までそんなこと思わなかったのに。
私は一つの桜と一人の人のために、勇気を振り絞った。