そうやって、私をさりげなく威圧してきてる気がする。私の気に入らないところがあれば、そうやって軽々と口に出して、修正するように言ってくる。それに、反抗なんてできない。
「カナー。早く来なよー」
「あっ、ごめん!今いく!じゃあまたね、八木ちゃん」
「うん、また…」
その「また」は、きっと授業中のいじりなんだろうな、と勝手に考えてしまっている自分に、私までそんなこと考えるな、と言い聞かせた。
そんな私の日々は、普通よりも、少し悪い傾向にあった。

「あ、お姉ちゃんおかえり!」
「なんで急に『お姉ちゃん』なんて呼び出したの、いつもは『仄花(ほのか)』なのに」
「言ってみたかっただけっていう、勝手な行動ー」
春花(はるか)は、臆病な私に対してポジティブな妹だ。きっと、大きくなったら、カナのようにグループの中心にいるだろう。
「今日は、お母さんもお父さんも遅いんだって」
「そっか。じゃあ、また夕飯は私がつくる感じ?」
「でも、たまには私も仄花の料理手伝いたいな」
じゃあ一緒につくるか、と言いながら、私は冷蔵庫の中を見た。すると、見事に何もない。
「…春花、買ってこれる?私、今どうしても勉強しないと、徹夜になっちゃうかもなんだよ」
「それは…しょうがない、買ってきてあげますよ!仄花の勉強のために」
「ありがとう…。メモ書いて渡すから、ちょっと待って」
これが、私たち八木家の日常だ。仕事が忙しく、帰りが遅くなる両親の代わりに、私が春花の面倒を見る。というか、もう春花も小学六年生だから、一緒に協力し合って生活している、の方がしっくりくるかもしれない。
私はメガネをかけているから(度なしだけど)、勉強ができるように見えがちだが、実際のところあまり得意ではない。しかも、家事もしないといけないので、より勉強をする時間など限られている。
ただ、私は徹夜でしないと本当に限界なため、私が言う徹夜とは、朝までといういことになる。それは絶対に避けたいため、春花も協力してくれる。
「はい、買ってきてほしいもの、とお金。少し多めで多分余るから、それで好きなもの買ってきな」
「やった!ありがとう!買ってきまーす!」
可愛らしい笑顔で、春花はスーパーへ行った。さあ、勉強しなければ。
私は、家では普通の「お姉ちゃん」になる。春花も、私が臆病なことは知っている。だけど、そんなこと気にせずに接してくれる春花は、とても優しいと思う。
よし。勉強して、春花を待とう。