また春が、やってくる。
「春花…!!ちゅ、中学の制服…!!」
「へへっ。どーよ、結構いい感じじゃない?」
「めっちゃ似合ってるよ!!可愛い!!でも…置いていかないでくれぇ…」
「それを言うのは私の方でしょ!」
桜が満開で。花びらが、前が見えないほど舞っていて。
去年と似たような春が、やってきた。
灯輝さんに会える。この日まで、どれだけ私が楽しみに待っていただろうか。
「やっっっっばい…!!仄花、クラス同じだよ!」
「え、本当!?…やった、カナぁ!よかったね!」
灯輝さんとさよならしてから、私の毎日はただただ楽しかった。そして、いつの間にか、かつて相棒だった度なしメガネは、私の身の回りから姿を消していた。
カナとたくさん話したり、クラスのみんなと文化祭や体育祭で盛り上がったり。そして、毎日桜の様子を観察したり。
時には灯輝さんのことを思い出して、早く会いたいと思ったりした。そんな、私の楽しい毎日。
「ねぇ、仄花、今日素原さんと会えるんじゃない?桜満開だし、進級式だよ」
「うん。放課後、会えるかな」
「いつもより早めに授業終わるんだから、終わったらすぐ行ってきなよ?後でどんな感じだったか教えて!」
「もちろん。会えたらね」
確かに、灯輝さんが言った通り、学校の桜はソメイヨシノだった。「春」を彩るのに相応しい、桜という名の最高の贈り物だ。灯輝さんの絵が見られなくなっても、思い出には残させてね。そう桜に呟いた。
思っていたよりも短い進級式を終えて、私は真っ先に校門へ向かった。
通り過ぎるたびに聞こえるクラスのざわめきが、声援のように聞こえた。
桜の花びらの大群の中を、小さく潜り進んでいった。口の中に花びらが入らないようにしながら、必死で走る。
人気のない静寂に包まれた校門に、光が差し込んだような気がした。
そこに立つのは、灯輝さんだった。
こちらに気付き、手を振ってくれた。息切れする私の背中を優しくさする。灯輝さんの温かな感触が懐かしく、瞳が潤む。
「はぁ、はぁ…、あ、灯輝さん…!」
「久しぶり。仄花ちゃん」
まっすぐなの変わんないねぇ、と、灯輝さんが優しく笑う。
「…去年の春と、同じ香りがするね」
そう言って、灯輝さんは桜の花びらを掴む。仄花ちゃんとここで会ったんだよね、と、廊下を指差す灯輝さんの手でさえも、懐かしい。
「学校どう?」
「すごい楽しいです。なんか、本当に毎日が過ぎるのがあっという間です」
「それはよかった。何よりもそれが嬉しいや」
すぐ終わってしまいそうな空間の儚さに、桜が笑顔で私たちの話を聞いてくれている。
「灯輝さんは?大学、ちゃんと行ってるんですよね?」
「うん。毎日楽しいよ。大学生素原灯輝完全復活だから」
「私もそれが嬉しいです」
お互いの、それぞれ違う毎日が、笑いあって話せるようになってよかった。そう思うばかりだった。
「春花…!!ちゅ、中学の制服…!!」
「へへっ。どーよ、結構いい感じじゃない?」
「めっちゃ似合ってるよ!!可愛い!!でも…置いていかないでくれぇ…」
「それを言うのは私の方でしょ!」
桜が満開で。花びらが、前が見えないほど舞っていて。
去年と似たような春が、やってきた。
灯輝さんに会える。この日まで、どれだけ私が楽しみに待っていただろうか。
「やっっっっばい…!!仄花、クラス同じだよ!」
「え、本当!?…やった、カナぁ!よかったね!」
灯輝さんとさよならしてから、私の毎日はただただ楽しかった。そして、いつの間にか、かつて相棒だった度なしメガネは、私の身の回りから姿を消していた。
カナとたくさん話したり、クラスのみんなと文化祭や体育祭で盛り上がったり。そして、毎日桜の様子を観察したり。
時には灯輝さんのことを思い出して、早く会いたいと思ったりした。そんな、私の楽しい毎日。
「ねぇ、仄花、今日素原さんと会えるんじゃない?桜満開だし、進級式だよ」
「うん。放課後、会えるかな」
「いつもより早めに授業終わるんだから、終わったらすぐ行ってきなよ?後でどんな感じだったか教えて!」
「もちろん。会えたらね」
確かに、灯輝さんが言った通り、学校の桜はソメイヨシノだった。「春」を彩るのに相応しい、桜という名の最高の贈り物だ。灯輝さんの絵が見られなくなっても、思い出には残させてね。そう桜に呟いた。
思っていたよりも短い進級式を終えて、私は真っ先に校門へ向かった。
通り過ぎるたびに聞こえるクラスのざわめきが、声援のように聞こえた。
桜の花びらの大群の中を、小さく潜り進んでいった。口の中に花びらが入らないようにしながら、必死で走る。
人気のない静寂に包まれた校門に、光が差し込んだような気がした。
そこに立つのは、灯輝さんだった。
こちらに気付き、手を振ってくれた。息切れする私の背中を優しくさする。灯輝さんの温かな感触が懐かしく、瞳が潤む。
「はぁ、はぁ…、あ、灯輝さん…!」
「久しぶり。仄花ちゃん」
まっすぐなの変わんないねぇ、と、灯輝さんが優しく笑う。
「…去年の春と、同じ香りがするね」
そう言って、灯輝さんは桜の花びらを掴む。仄花ちゃんとここで会ったんだよね、と、廊下を指差す灯輝さんの手でさえも、懐かしい。
「学校どう?」
「すごい楽しいです。なんか、本当に毎日が過ぎるのがあっという間です」
「それはよかった。何よりもそれが嬉しいや」
すぐ終わってしまいそうな空間の儚さに、桜が笑顔で私たちの話を聞いてくれている。
「灯輝さんは?大学、ちゃんと行ってるんですよね?」
「うん。毎日楽しいよ。大学生素原灯輝完全復活だから」
「私もそれが嬉しいです」
お互いの、それぞれ違う毎日が、笑いあって話せるようになってよかった。そう思うばかりだった。