ーー体育の授業が終わっても、滝原くんは保健室から戻って来なかった。
次の授業が始まって、終わって。
それでも教室に戻って来ない。
そして、頬杖をつきながら隣の空席を見て心配してる自分がいる。
私を助けてくれた時に負ったケガだったから余計に。
ケガ、大丈夫かな。
保健室でちゃんと手当てしてもらえたよね。
でも、どうして戻って来ないんだろう。
昼休みを迎えると、美那は教室から飛び出した。
まだ入学したてで保健室の場所がわからず、首を左右させながら廊下を小走りで進んでいると、購買で買った昼食を片手に廊下を歩いている怜くんが近づいて来てキョトンとした目で声をかけられる。
「あれ、美那っち。誰かを探してんの?」
「ごめん、急いでるからまた後でね!」
私は滝原くんの事で頭がいっぱいで彼の横を素っ気なく通り過ぎて行った。
一方、その様子を見ていた澪は腕を組みながら怜の隣に立つ。
「もしかして、美那を狙ってんの?」
「澪には関係ないよ」
「美那は友達なの。いつもみたいに遊びならやめて!」
澪はムキになってそう言うと、怜はとり合おうとせずに後ろを向いてバイバイと手を振って教室へ戻って行った。