予定通りいけば、明日は莉桜の手術が行われる。

 カレンダーを見ながら、僕は軽く息をついた。莉桜と最後に会ったあの日は一輪も咲いていなかった桜が、今ではもう半分近く咲いている。

 学校の課題と睨み合うも思うように進んでいなかった僕は、気分転換のため散歩がてら外に出ることにした。


「うわ、寒っ」


 外気温は想像していたよりも低く、上着を一枚羽織ってこなかったことを少し後悔する。だけどわざわざ家に戻って上着を持っくるなんてことしなくても、歩いて身体を温めればいいだろう。

 公園の近くを通ると、フライングでお花見を楽しんでいる人たちの姿がちょくちょく見受けられた。
 莉桜のいる病院の中庭は季節ごとに色々な花を楽しめるという話だったが、あそこに彼女の好きな桜もあっただろうか。せめて病室からでも花見を楽しむことができれば良いのだが。


 僕は何の気なしに病院のある方角を見た。

 その途端、どうしようもない不安が押し寄せてきた。

 ……莉桜は大丈夫、だよな? 手術は成功するはずだよな? 手術は繰り返すほど危険になるという話だったけど、そうはいっても、まだ大丈夫だよな?

 莉桜の病状がどれほどのものなのか僕は知らない。一口に心臓の病気と言ったって、個人差は大きい。
 実のところそれほど重い症状ではなかったというオチであってくれないだろうか。……いや、それならこれまでの人生で彼女はここまで不自由にしていなかった。

 考えれば考えるほど不安が広がっていく。
 気分転換のつもりだったのに、むしろ気持ちは落ち込んでしまった。こうなったら意地でも気が晴れるまでは帰るまい。

 そんなことを思いながら歩き続けるうちに、気が付くと僕は普段あまり来ない道まで来ていた。